記憶 ―砂漠の花―
しかし、このまま奴等をただ待つわけにもいかない。
取り囲まれて、身動きが取れなくなってしまう。
「ねぇ、瞬間移動して城下町の人たちに紛れたら?発見されにくくない?」
アズも私の思い付きに賛成したが、世の中には様々な街があるようで、そんなに甘くはなかった。
「駄目だ。かえって目立ってしまう…。この街の住民は9割りほとんどがウィッチ。普通の人間が目立つ。」
先生はそう言い、金髪の私たちを見た。
「普通の人間たちは?」
アズが首を捻る。
「それは…、地下の街サザエルか…、ほとんどが『ゴザ島』だ…。」
沈んだ声で言いにくそうに、視線を窓の外に向けた。
「そんな…」
『ゴザ島』。
先生の言葉は、奴隷たちを意味していた。
彼らの姿を思い出してみると、いずれも泥で黒ずんではいたものの、金髪だった。
これがマルクのやり方、マルクの支配する国…。
私たちは呆然とする。
――ヒュンッ…
そんな音がして、
窓の外が明るく光ると同時に、
「いかんっ…!離れろ!!」
先生が窓際から離れ、私たちにそう指示した。
――ガシャァ…ンッ!!
窓ガラスが割れた。
私たちは壁側に避難する。