記憶 ―砂漠の花―



「…ここは…?」

城へ行くと言っていたので、敵に囲まれた城の室内を想像していたのだが、目の前の映像は全くの予想外だった。


木、芝生、花、池。
森…とまではいかないが、木の茂みの中に自分たちが隠れる形になっている。


「…城の中庭だ…」

しっ…と人差し指を口元にあて、先生は答えた。
慌てて私は口を押さえる。

城に侵入者がいるという事は、勘づかれているに違いない。


「タビの話だと、この時間…中庭なら上手くいけば先に姉上に接触出来ると踏んだのだが…」


私たちは警戒しながらも周囲を見回し、女性の姿を探す。

静かなものだ。
女性どころか人の気配は全くない。


「全然人いないね…」

「いても困るんだけど、リフィルさんだけ来てくれないかな…」

アズと私で、ぼそぼそと話していると、キースが手先で合図した。


「女性の歌声…。近づいている…」

「…え?」

必死に耳を澄ませる。

先生は、

「あっちからだ…」

と、すでに方向まで定めている。
本当に…感覚の鈍い私って役に立たないのね。


徐々に鮮明になる、女性の弱々しい儚い歌声。

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