記憶 ―砂漠の花―

「――見えたっ…」

目を凝らして遠くを見ていたキースが、息を潜めてそう告げた。


……え?

白髪まじりの黒髪に青い瞳。

木々を優しい眼差しで見つめながら、小鳥のさえずりに耳を傾け、その声の先に目を細めて微笑む。

砂漠の国で太陽に照らされた、色素の濃い私たちの肌とは異なり、彼女の肌色は白に近い。

その小柄の体は、痩せ細り、弱々しい印象すら受ける。


「姉上…」
「リフィル様…」

先生とキースはほぼ同時に呟いた。


あれが、女王リフィル様。
到底、あの儚いお姿で国の悪政をしているとは思えない。
やはりマルクが黒なのだと実感する。



「…リ…オン…?」

儚い歌声の主が、その歌の延長のようにか細い声でこちらに気付いた。

周囲を気にしながら茂みへと近づいてきた。


「15年ぶりですね、姉上…」

「…なぜ…なぜ来たのですか…!逃げるのです、早くっ…」

リフィルさんは久々の弟との再会に目を潤ませながらも、弟の身を心配していた。


「貴女と、この国を救いに…!貴女を誤解していた私をお許し下さい…!マルクが黒幕なのだという推測に何年もかかってしまった…」

「……!!」

< 157 / 283 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop