記憶 ―砂漠の花―
「――見えたっ…」
目を凝らして遠くを見ていたキースが、息を潜めてそう告げた。
……え?
白髪まじりの黒髪に青い瞳。
木々を優しい眼差しで見つめながら、小鳥のさえずりに耳を傾け、その声の先に目を細めて微笑む。
砂漠の国で太陽に照らされた、色素の濃い私たちの肌とは異なり、彼女の肌色は白に近い。
その小柄の体は、痩せ細り、弱々しい印象すら受ける。
「姉上…」
「リフィル様…」
先生とキースはほぼ同時に呟いた。
あれが、女王リフィル様。
到底、あの儚いお姿で国の悪政をしているとは思えない。
やはりマルクが黒なのだと実感する。
「…リ…オン…?」
儚い歌声の主が、その歌の延長のようにか細い声でこちらに気付いた。
周囲を気にしながら茂みへと近づいてきた。
「15年ぶりですね、姉上…」
「…なぜ…なぜ来たのですか…!逃げるのです、早くっ…」
リフィルさんは久々の弟との再会に目を潤ませながらも、弟の身を心配していた。
「貴女と、この国を救いに…!貴女を誤解していた私をお許し下さい…!マルクが黒幕なのだという推測に何年もかかってしまった…」
「……!!」