記憶 ―砂漠の花―


辺りの木々が急に騒がしく揺れた。


「――いたぞっ!!」

男の大きな掠れた声に、全員が注目した。


「逃げてください、リオン!早くっ…」

リフィルさんは小さく強くそう伝えると、男と対峙するかのように私たちの前に立った。

男の後ろからは、ぞろぞろと青い制服が増えていく。


「リフィル様!お離れ下さい!!」

「反乱軍め!ここまで、よくも…!」


彼女をこのまま置いてゆく事は出来ない。
誰もこの場から逃げようとはしなかった。

リフィルさんは、その様子を見て焦る。


「早く…」

全員が、黙って首を横に振った。


じりじりと一歩ずつ確かめるかのように、武器を持つ制服たちが近づいてくる。


「止まりなさいっ!!この方たちは…っ!……うぅ…!」

リフィルさんが声をあらげた途端、胸を押さえてその場にうずくまった。


「……!!」
「リフィル様!」


制服たちが怒りをあらわにする。


「リフィル様に何をしたぁ―!?」

もちろん、私たちが彼女に何かするはずもない。
先生が慌てて駆け寄ろうとする。


「動くなっ!反乱軍!」


――ヒュンッ!


先生の肩を何かが貫く。
赤い血が地面を濡らした。

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