記憶 ―砂漠の花―
2・癒しの庭
2・癒しの庭
午前の講義を終えた私は、一人、城の裏庭へと来ていた。
この城の裏庭には、戦争の爪痕が今も尚残っている。
少し寂しげな…、
戦争で破壊され、崩れかけた城壁。
そこからは、向こうに果てしなく続く砂漠の大地が覗いている。
城壁の手前では、
色とりどりの花たちが、乾いた風に揺られていた。
もちろん、この乾いた大地で花が咲くはずがない。
植物が当たり前の様に茂るカオスの泉から、少しずつ茶色の土を持ち帰って作った花壇だ。
『魔力で水を生みだし、
植物に水を与える。』
幼い頃に、
マギーの魔術の教えの一環として行われたこの行為に、私は安らぎを覚え、今に至るまで続けているのだ。
始めは一本の砂ヤシ。
年々、日を追うごとに花壇の面積は増えていった。
泉から株分けしてきた植物や、商人から譲ってもらった種から少しずつ育てていった花たちが、凛と咲く。
街の復興、建物の修理が進んでいく中、この場所だけはこのままにしてもらった。
人々の手がやっと城壁にまで回る頃には、もう花たちは咲いていた。
せっかく咲いた花たちに、負担はかけたくない。