記憶 ―砂漠の花―


「先生っ!!」

私が叫ぶのと同時くらいに、


「お止めなさい!」

と、上空から声だけ降ってくる。

誰もが声の主を探す中、彼はリフィルさんの横に一瞬で現れた。


瞬間移動して現れた男は、紺色のローブに小豆色の模様。
その服には金の糸の刺繍が所々に散りばめられている。

彼らより身分が上であることは確かだろう。
彼は…?


男はリフィルさんを介抱し出した。
そして、青い制服たちに向かい話す。


「あなたがた、ここはリフィル様の療養用の中庭…。立ち入り禁止のはずですが?」

「しかしっ!!反乱軍の侵入が!」


男が初めてこちらを振り返り、その顔を私たちに見せた。


「…なるほど?」

穏やかな表情を保つ彼の一方で、


「…マル…クッ…!」

先生が歯を食いしばりながら、小さくそう発した。

キースもまた彼を見据え、睨んでいる。


彼が、マルク。

なるほど、一見穏やかな表情と話し方は、良い人そうな印象を受ける。


「例え、反乱軍とはいえ、この方はリフィル様の弟君リオン様。あなた方が危害を与えて良い相手ではありません。」

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