記憶 ―砂漠の花―

「…ほぅ、どうしても私が裏でリフィル様を操っているという事にしたいようですね?…姉上を庇いたいお気持ちはお察し致しますが…。」

やはりマルクはこの調子を崩さなかった。


カチャカチャとマルクのカップが鳴った。
私たちは万一を警戒し、誰もお茶に手をつけようとはしない。


机の向かいにはマルク一人。
それに対峙する様に、私たちは肩を並べて静かに座っている。


談話室の入り口付近には、給事係の数人が場違いなのでは、とばかりにそわそわと壁に張り付き、沈黙を保っていた。



「あくまで、その仮面は剥がさない気なのだな?」

先生とマルク。
二人の会話だけが、この部屋を支配していた。


「リオン様も頑固なお方だ…。仮にそうだとして、誰が信じるのです?」

「…ぐっ…」


そう、誰もが仮面をかぶったマルクを信じ切っているだろう。
この長年リフィルさんに連れ添い、尽くしてきた彼を…。

対峙する先生は、王家を捨て『反乱軍』の長として生きてきた人。

洗脳された国民が、どちらを信じるか…。
私たちの方が立場が弱い。



そこへ、入り口から沈黙を破る女性の声がする。


「私はリオン様を信じますよ!」


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