記憶 ―砂漠の花―
「貴方を消せば、あのバリアもなくなるというわけですからね…。こちらも機会を伺っていましたよ?しかし、なかなか尻尾を出さない…。用心深い貴方がわざわざ出向いてくれた今!…私もチャンスということですよ!」
マルクが手のひらをこちらに向け構えた。
私たちもすでに奴から距離を取り、応戦する準備は出来ている。
「この人数相手に一人で勝てると思っているのか?」
先生がそう言った矢先、マルクの手は自身の胸の前で上を向いた。
その手が一瞬光ると、
手の上には、肌色の物体が現れる。
「さすがに1人では厳しいですからね…。これ、何だか分かりますか?」
「…!?」
――心臓だった。
生きている、心臓。
それはドクドクと脈打っていた。
「これがあれば、持ち主は私の思いのまま…。どなたの物だか…、もうお分かりか?」
マルクは、私たちの顔色を伺いながら、わざわざ丁寧に説明した。
――リフィルさんの心臓。
それしか答えは見当たらない。
先程、リフィルさんが胸を押さえ突然倒れたのも、これで納得が充分にいく。
「これで手が出せないでしょう…?ふふふ…」
マルクが気味悪く微笑む。