記憶 ―砂漠の花―
戦争の爪痕を残すままという事に、人々から反対の意見も当時はあがったらしい。
しかし、
そんな私の『初めての我儘』を、父上は許してくれた。
毎日、ここへ水やりに来る事は私の日課になっている。
毎日、水と一緒に、
私の思いを伝えた。
この砂漠で、
『元気に咲いて』と。
滅多に人も来ない静かな場所。
遠くで、微かに…
街のざわめきや、城を行き交う人々の声がする。
寂しげな、
半分崩れかけた城壁に、
乾いた砂漠の姿。
そして、
そんな風景を前に、
立ち並ぶ花たちは、
凛と誇らしく、乾いた風に吹かれては揺れる…。
この光景が、私は好きだ。
そして、
横からは馬たちの鳴き声。
元々の裏庭の役割は、馬小屋。
馬小屋から張り巡らされた柵のいっぱいまで、城の馬たちがやって来ては花壇に向かう私に静かに声を掛けてくる。
幼い頃、寂しさに涙するばかりの私は、動物と話せる事、周りの人間と自分が違う事を受け入れられなかった。
耳を、塞いでいた。
そんな私に語り掛け、優しく慰めてくれた。
私が次第に動物たちに心を許せるようになれたのは、ここの馬たちのおかげでもあった。