記憶 ―砂漠の花―

私たちは、唇を噛んで固まっていた。

手が出せない…。
あれを潰されでもしたら、リフィルさんは…。



「どうぞ私に構わず!!」

談話室の入り口から再び声が響く。

そこには、リザさんに寄り添うリフィルさんが必死の形相で立っていた。


リザさんから離れ、部屋に足を運びながら、その手には鋭く光る短剣が握られ、自身の喉を捕らえていた。


「リフィルさん!?」

思わず、沈黙を決め込んでいた私の口から声が出た。



マルクがリフィルさんに静かに問う。


「何の真似です?死ぬのが怖くて、今まで服従してきた貴女が?」


「リオンが来てくれた今、後の事はリオンに任せられます…!私を盾にしても無駄です!」


刃先で傷付いた細い喉に、つぅ…と血がつたう。


その真剣な表情で、本気だと悟ったマルクは分が悪くなる事を恐れ、こう提案してきた。


「リオン様、今日のところは私が退きましょう。」

「…なっ!?」


リフィルさんの手から、カランと短剣が床へ落ちる。
同時に彼女もまた床へと倒れた。


「…マ……ルク…!」

そう奴を恨めしそうに見つめながら、彼女はゆっくりと瞳を閉じた。


「姉上!!」
「――貴様!!」

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