記憶 ―砂漠の花―

「…いやですねぇ。眠らせただけですよ!私も人質は失いたくないですから。」

やれやれ、とマルクが首をすくめた。


リザさんが、倒れたリフィルさんに駆け寄る。
険しい表情が少し和らぎ、先生に向けて頷いた。


「昨日やっと奴隷たちに作らせていた私の城が完成しまして…。そちらにご招待しますよ。お待ちしています。」


そう言い残すと、
その場で一瞬の光を放ち、
マルクは消えた。


「……っ!?」
「瞬間移動か!」


姿は消えたが、声だけは頭上から響いてきた。


『まぁ…場所はお教えしません。ゆっくり来てください。あー…あと、それまでリフィル様は目覚めませんから、この心臓は大事にお預かり致しますね…?』



天井から降ってくる声はまだ続く。
霧が舞うかの様に、部屋中にマルクの声が拡がる。

天井から、前から横から、
耳元から…

耳障りで不愉快だ。

耳を塞いでも尚、
その声は私の中へ入ってくる。



『すみません。…もう一つ…。ルリ島へはその城から行けますが、開かずの間の鍵は私の手にありますから無駄ですよ…?では、近いうちにまた…』


高々な笑い声が、徐々に鼓膜から薄れていった。

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