記憶 ―砂漠の花―
部屋は、静けさを取り戻していた。
「…くそっ!」
アズが力なく剣を降ろした。
「姉上…」
先生が、リフィルさんを介抱するリザさんの元へと急ぐ。
「本当に魔力で眠っているだけのようだ…。」
「…良かった…。」
私は小さく息を吐き出す。
先生が膝をつき、リフィルさんの顔を覗き込む横で、リザさんが涙ながらに嘆いた。
「リオン様、早くリフィル様を自由にしてあげて下さいませ!!操られていない時のリフィル様は以前のお優しいまま!隠してはいますけれど、精神をどれだけ病んでいらっしゃる事か!」
先生は、ただただ眠るリフィルさんを辛そうに見つめていた。
「ご結婚もされず、子も授かれずっ!女性としての幸せも何一つ…!この方の今までの人生、何だったのでしょう!」
先生は唇を噛み締め、反応の返らないリフィルさんの手を、強く握りしめた。
「…およそ30年!あまりに長い!私が城を出たのが15年前…。会う機会が少なかったとはいえ、城にいた15年。貴女を恨むばかりで、なぜ気付かなかったのかっ!」
本当に申し訳ない、と涙ながらに呟いた。