記憶 ―砂漠の花―
それを受けて、先生が深く頷きながら説明する。
「あぁ…1つは姉上が…今はマルクがだが、指輪。そしてもう1つ、私のが首飾りだ。」
アズの手には、代々受け継がれてきたのだろう年季の入った首飾りがしっかりと握られた。
「アイリさん、魔力を『解除』しなさい。それを持ち、開かずの間から瞬間移動すれば自然とルリ島に行けるだろう。」
「…はい。」
私は、静かに胸に手を当てた。
『解除』――
心臓の中に閉じ込めた魔力。
ざわざわと、
その力は波を打ちながら、
私の全身に流れる血へと再び拡がっていく。
――ドクッ…ドクン…
まるで、
生き物のよう…。
水を得た魚の様に、閉じ込められていた反動からか、血は生き生きと騒ぎ立てる。
私は鳥肌を立て、顔を歪めていた。
『解除』した途端、閉ざされていた感覚が戻る。
全てが鮮明。
こんなにも見え、
こんなにも感じ…
――恐い…
アズの首飾りを握る手に力が入る。
やっと、ついにカルラさんと会えるのだとアズの心臓が高鳴っているのが分かる。
先生やキースやリザさんの深い悲しみ、それぞれの過去の自分への後悔が…
部屋中に満ちていた。