記憶 ―砂漠の花―
「えぇ…嬉しいわ。しかし、マルクは…」
「はい、奴を倒して…サザエルを救ってからになります…が、必ず連れて帰ります!」
立派になったわね、とカルラさんは何度も何度も頷いた。
ふとカルラさんが私の方へと体を反転させる。
「アイリ…さん…?」
「はい…」
「いえ、アイリ…?貴女さえ良ければ、…私を母と…、呼んでもらえますか…?」
そう柔らかに微笑んだ。
喉が熱い。
感情より先に、
私の瞳から熱いものが込み上げた。
母と…
呼んでいいのですか…?
「はい…、ははう…え…!」
声を、何とか絞り出す。
アズが私の肩をしっかりと抱いた。
もう一つ、大きな手が私の頭を撫でた。
良かったな、と…。
「…キース…」
いつの間にか起きていたキースが、カルラさ…母上の前に立った。
「ご無事で何よりです、カルラ様…!」
そう再び砂地に膝をつけた。
「貴方は…キースですか?」
「はい…!」
「あぁ…貴方もよく無事で!」
今日は何と素晴らしい日でしょう、そう瞳を揺らして呟いた。
「王も、民も…今の平和なラルファを早く貴女に見ていただきたいものです…」
「そう…そうなの…」