記憶 ―砂漠の花―
『アイリはラオウと違って「センサイ」なんだよ!』
レンがラオウに向かってそう鳴くが、負けず嫌いのラオウが黙っていなかった。
『はぁ!?繊細っつうのはアズの事をいうんだよ!』
『違うよぉ!アイリの事だよ!お母さんがよくそう言ってたもんっ!』
レンがムッと怒って鳴くので、私の怒りは溜め息に変わった。
「…二人とも、喧嘩しないで?」
この茶色の馬は、私の愛馬であるレン。
レンが『お母さん』と呼ぶのが、幼い私をよく慰めてくれていた馬だ。
その馬はもう亡くなってしまったけれど、その馬を母と慕っていたレンが、今は私を救ってくれている。
心優しく、素直な良い子。
私の喧嘩相手であるラオウとは、正反対の性格である。
数少ない、
私のお友達たち…。
『僕、アイリが魔力使うところ見るの好きだよっ!』
レンが私に意気揚々と鼻息をあらげる後ろで、
『…まぁな。』
ボソッとラオウも呟く。
『あはっ、ほらね。ほら、水やりしなよっ!』
「うん…」
私は、再び花壇に視線を落とした。