記憶 ―砂漠の花―
あれ…?
「また新しい芽が増えてる…」
砂ヤシの隣。
昨日まで三本だった白い可憐な花の前に、二つの小さな芽。
顔を出したばかりの芽は、薄い黄緑色の首を傾げ、その頭にはまだ茶色い土が残る。
『何日か前に、鳥が種をくわえて来たんだよ?それかなぁ?』
『多分、それだろう。』
「…ふふっ、そう…。」
私は可愛らしい芽を見つめ、顔をほころばせる。
可愛い…
新しい「命」――、
負けないで…?
優しい気持ちで、心がやんわり満たされる。
私はそっと瞳を閉じ、
花壇に、手を向ける。
砂漠から吹く風が、
私の肩まで伸びる黒い髪を揺らした。
命に潤いを――、
励ましを…、
勇気を。
どうか、
この地で誇らしく…
花開きますように…―――
……ドクン。
静かに…、
体に流れる「血」を感じ取る。
ざわざわ、と。
私の「血」が…、
力が、全身で騒ぎ出す。
私は、魔術を使う時に必ず生じる、この瞬間が嫌いだ。
まるで…、
自分のものとは思えない様に、
「血」は自ら意思を持つかの様に、
ふつふつ、ざわざわと、
私の中で、動き出す。