記憶 ―砂漠の花―
17・運命の悪戯
17・運命の悪戯
夢を見た。
いつものあの夢…。
夕暮れの砂漠は、
赤く、果てしなく続く。
『――やれっ!』
馬に股がる黒い人影が叫ぶ。
私は、刺される――
『やめてぇぇ―!』
私の母の声…
痛い…
痛いよ…
苦しい…
私は、死ぬの…?
助けて…
――ドクン…
心臓が悲鳴をあげる。
声が聞こえる。
――壊シテシマエ…
だめ…
ここには、私の大切な人たちがいる。
父上、母上、キース…
アラン、叔父様、先生…
そして、
アズ…!!
彼がいてくれる限り、
想ってくれる限り、
私は、独りじゃない…
――壊セ…全テヲ…
「――…だめっ!!」
自分の叫ぶ声で目が覚めた。
「……あ…」
枕には、涙なのか汗でなのか…染みがついていた。
ベッドだった。
起き上がり周囲に目を向けると、私に視線は集まっていた。
「アイリ…?」
アズの緑色の瞳に私が映る。
「アズ…」
今見ていた夢のせいか、私はほっ…と胸を撫で下ろした。