記憶 ―砂漠の花―
…私は、皆に支えられて生きている。
独りじゃない。
「…ありがとう。」
もう一度、声に出して言った。
言いたかったんだ。
「アイリさん、魔力は大丈夫かな?私自身『紅の力』については知識だけで実際の事については分からない。」
先生が私の目を見つめる。
「…怖い力なのは確かです。私の精神力が弱れば昨日のようになる、それは分かりました。」
皆が息を飲んだ。
「力が暴走する、自我を失う…危険な状態だ。これから、マルクとの戦いで何があるか分からない。だから…」
無理に行かなくてもいいんだよ…?と先生から声に出さなくても伝わってくる。
「大丈夫、行きます。自分を失わないように頑張ります!」
「…そう言うと思ったよ…」
先生は笑った。
自分を失えば、
あの声の主に体を乗っ取られるような気がした。
私の弱い心に、食らいついてくる。
…私が、しっかり意識を持っていれば大丈夫なはずだ。
「マルクの城の場所は昨夜はっきりした。準備が出来次第行けるが…、カルラ様は姉上についていていただけますか?」
先生が母上にそう告げるが、母上は首を横に振った。