記憶 ―砂漠の花―
――マルク信者の多さに、
私は呆然とした。
そこは辺りを深い暗い森に囲まれた、澱んだ城の前。
先日出来上がったばかりとされる石造りの城は、まるで攻め入られる事を予測していたかの様だった。
――要塞。
そんな言葉が似合う、重量感のある灰色の城。
華やかさは微塵もない。
城に踏み込ませまいと、百人はいるであろう青服の群れが、城の入り口へと続く広い階段の前に集結していた。
じりじりとその距離を縮めながら、開戦を今か今かと警戒している。
先生が私に視線を送った。
私は小さく頷くと、
鎮めていた魔力を解き放った。
体から滲み出る魔力は、
ゆらゆらと炎の様に、
紅く、
立ち上る…。
「…紅い…力だ…!」
「…紅い…」
ざわざわと…、
青服の注目は、自然と私へと集中した。
私はさらなる注目を集めるべく、自分が耐えれる限界まで、魔力を解放させていく。
…血が、暴れている。
ドクドクと…
鼓膜の傍で、
心臓が鳴っている様…。
気持ち悪い…
私は先生の指示で、そんな心とは裏腹に、笑顔で彼らを見つめていた。
私の体を、
紅い光が大きく纏う。