記憶 ―砂漠の花―

青服たちは、言葉をなくしていた。


忙しく、そわそわと周囲の仲間に目を配る者。
この力を前に、ガタガタ…と震え出す者…
後ずさりしていく者…。


そんな彼らの反応は、先生の狙い通りだった。


紅い力に、
強大なその魔力を持つ私の、余裕の笑み…。

余裕の笑みにはならなかったけれど、引きつる私の笑顔が彼らにより恐怖を与えた事は間違いなかった。


紅い力は、
皆にとっては怖いんだ…。

同じウィッチすら、怖いんだ。


先生の作戦とはいえ、
私の心は、哀しみに満ちていた。


哀しみすら…、
炎を燃やす燃料の様に、

私の血に取り込み、
紅い魔力を大きくする――


「……ふふっ…」

哀しいのに…、
すごく、哀しいのに…
急に可笑しくなって、本当の笑みが少し漏れた。


やがて…、
私を取り巻く紅い力が、大きく濃くなりすぎたのか、
視界は、全て紅くなった。

こんな事…
初めてだった。



私に青服の誰もが集中する中、先生の力は密かに放たれていた。

大きな魔力が、彼らの視界に触れぬよう足元を通って、彼らの地面を覆った。


< 209 / 283 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop