記憶 ―砂漠の花―
青服たちは、言葉をなくしていた。
忙しく、そわそわと周囲の仲間に目を配る者。
この力を前に、ガタガタ…と震え出す者…
後ずさりしていく者…。
そんな彼らの反応は、先生の狙い通りだった。
紅い力に、
強大なその魔力を持つ私の、余裕の笑み…。
余裕の笑みにはならなかったけれど、引きつる私の笑顔が彼らにより恐怖を与えた事は間違いなかった。
紅い力は、
皆にとっては怖いんだ…。
同じウィッチすら、怖いんだ。
先生の作戦とはいえ、
私の心は、哀しみに満ちていた。
哀しみすら…、
炎を燃やす燃料の様に、
私の血に取り込み、
紅い魔力を大きくする――
「……ふふっ…」
哀しいのに…、
すごく、哀しいのに…
急に可笑しくなって、本当の笑みが少し漏れた。
やがて…、
私を取り巻く紅い力が、大きく濃くなりすぎたのか、
視界は、全て紅くなった。
こんな事…
初めてだった。
私に青服の誰もが集中する中、先生の力は密かに放たれていた。
大きな魔力が、彼らの視界に触れぬよう足元を通って、彼らの地面を覆った。