記憶 ―砂漠の花―
私は鳥肌が立ちそうなのを堪えながら、頭の中では「水」をイメージする。
幼い頃から慣れ親しんだ、
カオスの泉の、水…
きっと…、
あそこの水だからこそ、花たちは咲き誇り、私に安らぎを分けてくれるのだ。
私の脳裏で、カオスの泉がキラキラと輝いた。
……ドクンッ。
私の血に宿る、
閉じ込められていた魔力が…、
大きくなる。
膨れ上がる…。
それは、やがて私の体の中には押さえきれない程に…。
私の髪が、宙になびく。
例え、風がなくとも…。
自分の内部から溢れ出す魔力。
まるで、外に出たいと自己主張するかの様に、全身から滲み出る。
ウィッチが魔術を使う際には、必ずこうなる。
ウィッチにしか見えないけれど、体から滲み出す魔力には、色が付いて見える。
その人、それぞれの「色」。
私は、赤い色。
マギーは、少し薄い黄色…。
ウィッチの個性なのだと、マギーは言っていた。
やがて、
赤い魔力に、体は包まれる。
体の中で、魔力が渦巻く。
頭から、足の先まで…
なんだか、
急かされているみたい。
だから、
…出してあげる。
ほんの、少しだけ。