記憶 ―砂漠の花―
辺りには、
静寂が訪れていて…
「やめてぇぇぇ――!!」
母上の悲鳴だけが、響く。
…これは夢?
私の記憶と重なる。
嫌…、い…や…
何が、起こったの?
…夢?
きっと夢なの…
アズの体が、
地面へ、落ちる――
力なく…
血が滲む胸を押さえ、
その目は、虚ろに泳ぐ…。
マルクの笑い声が、
母上の悲鳴に重なって響いた。
「い…嫌ぁぁぁ―!!」
私は崩れるアズの元へと駆け出した。
「ッ!!マル…クぅ――!!」
キースと先生が、周りをなぎ倒しながらマルクに向かって行くのが、視界の隅で見えた。
「アズッ!アズ…!!」
アズの胸からは赤い血が大量に滲み出す。
それは止めどなく…
――トクン……
トクン……
……トクン…
心臓の鼓動が、
…徐々に、弱まる――?
さっきまで…、
さっきまでは、隣にいたの。
心臓の鼓動は、
私の、すぐ傍にあったの…
「…嫌よ、嫌!アズ!置いていかないで!!」
「アズ!しっかりして!貴方まで失いたくない…、おね…がい…」
母上が、アズの胸を抱いて地面に崩れた。