記憶 ―砂漠の花―

辺りには、
静寂が訪れていて…


「やめてぇぇぇ――!!」


母上の悲鳴だけが、響く。



…これは夢?
私の記憶と重なる。


嫌…、い…や…
何が、起こったの?

…夢?
きっと夢なの…



アズの体が、
地面へ、落ちる――

力なく…
血が滲む胸を押さえ、
その目は、虚ろに泳ぐ…。


マルクの笑い声が、
母上の悲鳴に重なって響いた。



「い…嫌ぁぁぁ―!!」

私は崩れるアズの元へと駆け出した。


「ッ!!マル…クぅ――!!」

キースと先生が、周りをなぎ倒しながらマルクに向かって行くのが、視界の隅で見えた。



「アズッ!アズ…!!」

アズの胸からは赤い血が大量に滲み出す。
それは止めどなく…


――トクン……
トクン……
……トクン…


心臓の鼓動が、

…徐々に、弱まる――?


さっきまで…、

さっきまでは、隣にいたの。

心臓の鼓動は、
私の、すぐ傍にあったの…


「…嫌よ、嫌!アズ!置いていかないで!!」


「アズ!しっかりして!貴方まで失いたくない…、おね…がい…」

母上が、アズの胸を抱いて地面に崩れた。


< 214 / 283 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop