記憶 ―砂漠の花―


アズの血にまみれた手が…、

震えながら、
私に向かって伸びてくる。


「…ア…イリ…」

「アズ…、アズ…!」


何度も…
何度も、名前を呼ぶ。

貴方を引き止められるなら…、
何度でも…

いくらでも呼び掛ける――


だから…

どうか、逝かないで――…



私の頬は、アズの温かい血で赤く染まる。

私の震える両手は、
何度もアズの頬を擦った。


アズの唇が、微かに動く。


「…お前を…幸せに…したかっ…ただけな…だ…」

……ぁ…


…トクン……
トク…ン…
…………
……




「…ぁ…、ぁ……」


――アズの鼓動は、

音は、

しなくなった……



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