記憶 ―砂漠の花―
私の手に、
アズの赤い血…
血…
ち…
「――嫌ぁあぁぁぁ―っ!!」
涙を流す私。
宙に舞う黒い髪。
紅い魔力…
血…
私の鼓動が、
暴走を始めた――
ううん…、
もう始まっていたんだ…
血の…
解放の秒読みに、
私は、気付いていたの…。
もう手遅れ…
――壊シテシマエ
壊シテシマエ、全テヲ…
「ふふふ…!ふふふふ…」
可笑しい…
すごく可笑しいの…
「――アイリ!?」
覚醒の声がする―――。
壊セ…
大地ヲ、全テヲ、
焼キ払エ……!!
アズハ死ンダ…
オマエノ一番大切ナ、
アズハ、イナイ――
アズがいない
アズがいない。
いない…
いないの…
「――アイリぃ!!駄目よ!」
母上が今にも発狂しそうな裏返る声で、
私の名を呼ぶ。
私の名…?
アズがいない、
私は誰…?
私は、拾われた子…
イラナイ子…
――ドクンッ…
紅い力に、
飲み込まれる――
次第に…、
視界は全て、紅い。
声は、聞こえない。
自分の心臓の大きな音が、聴覚を支配していた。
人の口が動いている事で、何か言っているんだと分かる…