記憶 ―砂漠の花―
…心臓…?
いらないわ。
だって、
アズの心臓は動かない。
もう…
動いてないじゃない?
もう遅いの…
誰のモノなの…?
いらないわ。
私が、左手でその心臓に触れようとした瞬間…
私の左腕が、
掴まれた…
ツカマレタ…
紅イ光ハ、全テヲ弾クノニ。
紅い光に、
重なり合う光…
私の腕を力一杯に、
掴む震える手…
弾かれまいと…
「――それは、駄目だ!リフィルさんのだ…!アイリ!」
声が、耳元に届く。
苦痛を浮かべた表情が、
目の前に現れた。
紅い力は、全てを弾くのに。
重なるのは、
『何色』の魔力――?
見えない…
そして、
目の前にある顔は…
どうして…?
嘘…
…どうして?
「……アラン…」
ふと…、
私は正気に戻った。
私を包む紅い光が、
私の血へと、
還っていく…
視界に色彩が戻る。
紅い力に重なるのは、
『紫色』の魔力―――。
「…アラン……」
「…これが『奥の手』…」
アランは私の腕を掴んだまま、
青い瞳で、
そう言った……