記憶 ―砂漠の花―
こんな…
こんな私は、皆の目にはどう映るんだろう。
きっと、
ラオウやレンには「赤い魔力」は見えないから、ただの不思議な光景に映っているんだろう…。
どうか…
優しく、優しく…
私の手の先から、
赤い力は、
柔らかな水の塊と姿を変えて現れた。
優しく…
命に、潤いを――。
私が両手を広げると、
花壇の隅々まで、水は優しく降り注ぐ。
視界の横で、レンが歓声をあげながらその様子を見つめていた。
『ほらな?しかめ面…』
ラオウがレンに同意を求めた。
私は、フッと全身から力を抜き、気まずくレンに愛想笑いをする。
ざわついていた魔力も、名残惜しそうにスゥッと血に戻っていく。
マギーの教えも、年々高度な術になっていくし、今では大分慣れてはきたけれど…、
やっぱり、しかめ面。
知ってる…。
マギーとの勉強の時間、
それと、この水やりの時間。
それ以外では、
必要とされない限り、
魔術は使っていない。