記憶 ―砂漠の花―
紫の魔力…?
奥の手…
呆然と立つ私の手から、マルクが離れた。
今だとばかりにマルクは逃げ出した。
その手には、しっかりと切り札である心臓が持たれている。
「ぐっ…」
キースと先生が、すぐにマルクを追い詰める。
気が付けば、
たくさんいたはずの青服の立っている姿はない。
地面に倒れ眠る人数も、
私が傷付け、血を流す彼らも、
当初の半数くらいだった。
あとの青服たちは、逃げ帰ったのだろう。
でも…、
そんな事どうでも良くて、
私は、アランを見つめていた。
……どういう事?
もう、全然分からないよ…
止めどなく、
音もなく静かに流れる涙。
先生が叫んだ。
「アラン君!ここは二人でいい!一度ここから離れなさい!」
アランは頷くと、
ただ呆然と立ち尽くす私と、
泣き枯らした母上と、
動かないアズを連れて…、
紫色の魔力を放ち、
瞬間移動した。