記憶 ―砂漠の花―
ここは、サイルの城。
アランが、アズをベッドに寝かせた。
綺麗にしてやろう、と服を魔力で変え、アズの赤い血の染みはなくなった。
ただ眠っているだけのよう…
でも、
起きないんだ…
「…ねぇ、…どうして?」
私はアランに静かに聞いた。
アズを見つめながら。
「…この力の事?」
――ドクン…
感情が…溢れる。
「そうよ!なぜ隠していたの!?魔力を持っているのに、ウィッチなのに、なぜ、あの時アズを助けてくれなかったの!?男の手を止める事くらい出来たでしょお!?奥の手は、何の為の奥の手なの!?アズは死ななかったかもしれないじゃない!助かったかもしれないじゃない!どうして!?」
はぁ…はぁ…
と、静かに私の興奮した息づかいだけが聞こえる。
どうして…
なぜ…
なんで…?
「…っ………」
アランは何も答えない。
唇を噛み締めるばかり。
――ドクン…ドクン…
行き場のない、怒りが…
アランに向いてしまう。
「――答えてよ!!」
ドクン…ドクン…
私たちの間に緊迫した雰囲気が漂う。
心臓の音だけが、周囲に響いている。