記憶 ―砂漠の花―
静かな部屋の中で、
皆の心臓の音が、重なる。
アランの、母上の、
私の…と、
――あと、もう一つ…?
「―――!?」
アランも気付いたのか、私と同じ瞬間にアズを見た。
「…嘘だろ…?」
「嘘……」
「…まさか…そんな馬鹿な…!」
アランが恐る恐る、アズの胸に手を当てた。
「どうしたというの…」
母上が、まだ深い悲しみの中で聞いた。
「…アズの心臓が…動いてる!!」
確かに
確かに、
止まっていたのに。
「…生き返った!」
アランがアズの服をめくる。
痛々しい傷口が目に入る。
しかし…、
ふさがっていく。
「…どうして?…どう…し…て?」
アズの傷口は完全に塞がり、少しばかりの傷跡を残すだけとなる。
「……え?」
アズの体が、魔力に包まれる。
紅い光――
「…私、何もしてないよ…?」
「…分かってる…。」
アズの髪が、
私の大好きな金髪が、
黒く、染まった―――
「………!?」
何が起こったの?
紅い光を纏ったまま、アズは今も眠り続けている。
「――もう一つの心臓…」
アランが、そう呟いた。