記憶 ―砂漠の花―

静かな部屋の中で、
皆の心臓の音が、重なる。


アランの、母上の、
私の…と、



――あと、もう一つ…?


「―――!?」

アランも気付いたのか、私と同じ瞬間にアズを見た。


「…嘘だろ…?」
「嘘……」


「…まさか…そんな馬鹿な…!」

アランが恐る恐る、アズの胸に手を当てた。


「どうしたというの…」

母上が、まだ深い悲しみの中で聞いた。


「…アズの心臓が…動いてる!!」


確かに
確かに、
止まっていたのに。


「…生き返った!」


アランがアズの服をめくる。
痛々しい傷口が目に入る。

しかし…、
ふさがっていく。


「…どうして?…どう…し…て?」


アズの傷口は完全に塞がり、少しばかりの傷跡を残すだけとなる。


「……え?」

アズの体が、魔力に包まれる。


紅い光――


「…私、何もしてないよ…?」

「…分かってる…。」



アズの髪が、
私の大好きな金髪が、

黒く、染まった―――



「………!?」

何が起こったの?

紅い光を纏ったまま、アズは今も眠り続けている。



「――もう一つの心臓…」

アランが、そう呟いた。


< 222 / 283 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop