記憶 ―砂漠の花―
ヒヒィン…
『…お、アズ。』
ラオウの鳴き声に、私はビクッと肩を震わせて反射的に後ろを振り返った。
そこで、
アズが、見てた…。
私を、見てた。
「水やり、終わったか?」
そう普段と何一つ変わらずに、笑っていた。
「…あ、うん。終わったよ?」
そう私も笑顔を作る。
魔術を使っているところを見られた。
私の心に動揺が起こる。
今の、見てた…?
その笑顔の裏側で、
今、…何を思ってる?
やっぱり、自分と違うんだな、って思ってる…?
私の魔力、
アズは、どう思っているの?
怖い…?
…そんな事、
恐くて聞けない。
知ってる。
優しいアズは、
私が傷付く事は、言わない。
だから、不安。
「…また増えたか?花壇。どんどん緑が増えていくな?」
「うん、素敵でしょ?自分たちで種をこぼしたり、鳥が種を運んで来てくれたり…。もっと大きくなるよ!」
私は、花壇に近付くアズを迎え入れる。
両手を広げて、精一杯明るく振る舞った。
「この街のオアシスは、カオスの泉より植物が少ないからな。種類も、砂ヤシがほとんどだし…」