記憶 ―砂漠の花―
いつものふざけたアランが、『嘘』を隠す為の壁を作った姿で。
このまま、甘えてしまえば楽になれるのに…
私の心は、
未だアズに囚われたまま…。
私とアランの色が混ざり合う。
「…………」
ふっ…と、
この部屋に満ちる魔力の存在が増した。
「―――!!」
私たちの視線の先には、ベッドから半身を起こしたアズの姿があった。
「……アズ…」
アランがそう呟き、私を抱く力を緩めた。
アズの制御を知らない紅い力がメラメラと渦巻く。
アズは、乾いた唇をぎこちなく動かす。
「……どういう…ことだ…?」
アズが起きた。
生きている。
話している。
動いている。
私の鼓動が高まる。
込み上げる歓喜。
「……俺と…アイリが…?」
そして…
聞かれていた…?
知られた。
知られてしまった。
込み上げる、哀しみ――
「……それに…この力は――?」
アズが刺されたはずの自分の胸を確認する。
「……アイ…リ…?」
そう差し出されるアズの手に、私の返答を待つ青い瞳に…
私は、近づけない。
足が…すくむ。
声が…、出ない。
出せない。