記憶 ―砂漠の花―
「…アイリ――?」
もう一度私を呼ぶ声に、
私は首を振って、
逃げるように後退りした。
見兼ねたアランがそっと私の肩を抱いた。
そんな時だった。
「アズはっ…アズはっ――!?」
そう声を発しながら、入り口から顔を出したのは、あの地に置いてはずのキース。
例え、命が助かったとしても起きているはずのないアズを目にして、
「…どういう事だ…?」
と私たちに問う。
キースに少し遅れて、先生が入り口に立っていた。
「――マルクはっ!!」
アランが声をあらげた。
「…姉上の心臓だけは取り返したが…、もう少しというところで逃げられた。」
「…そう…」
先生が続けてアランに聞く。
「アラン君…、やはり…アズ君は…。」
「…はい…」
「アイリさんの事も…」
「…はい…。描いていた予想の中で、最も恐れていた結果でした…」
「……そうか…」
先生が一瞬私を見て、目を伏せた。
二人の話を目で追っていたキースが説明を求める。
「何の事だっ!!」
自分の腕や頬から滴る血を省みず、きっと事の重大さを本能で感じている。