記憶 ―砂漠の花―


「……っ…!!」

アズは、私を抱き締めようと伸ばした手を、
握りしめて、
ゆっくりと自分の元へ戻した。


「……有り難う…」

アズは涙を堪え、無理矢理に笑顔を見せる。


「有り難う…アイリ…。我が『妹』…!」


笑顔のアズが、
涙で見えなくなる。



……蓋を…、

蓋を、しましょう。

お互いのこの心に…。


いつか、蓋の『中身』が自然となくなる事を待ちましょう。




――トン、トン…

入り口の壁が叩かれた。

アランが半身を覗かせていた。


「…ごめん…、もう平気か?…アズ、叔父様が来たんだ。」

「……父上が!?」

アズは、ごしごしと自分の顔を拭う。


「……わかった、行くよ…。」

名残惜しそうに私を見て、立ち上がった。

そして、入り口でアランとすれ違うと、


「……『妹』を、頼むな…」

とアランの肩を叩いて去っていく。



なかなか立ち上がらない私を見て、アランが横に腰掛けた。


「……ちゃんと話し出来たか…?」

私はアズに習って、無理矢理に笑顔を作る。

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