記憶 ―砂漠の花―
3・私の兄 アズ
3・私の兄アズ
「…そろったな。」
そう言って、父上が最後に昼食の席についた。
香ばしいパンのにおい、魚介の香草焼き、肉にフルーツに…
ラルファは他の国と広く交流を持ち、行商も盛んである為に、食材も砂漠の地にしては流通している。
しかし、昼食からこんなに多くの皿が並ぶ事は滅多にない。
父上の何らかの陰謀があるに違いなかった。
隣に腰を下ろしていたアズもそう感じたのか、床に座り直しながら不安気な顔で私を見た。
今日は何事だ?と。
「ん?お前たち食べないのか?」
食事になかなか手を伸ばそうとしない私たちを見て、父上は首を傾げた。
「いえっ…、昼食から豪華なもので面をくらってしまって…」
ははっ…と、アズは調子良く笑う。
「まぁ、たまにはこんな日があっても悪くないだろう?」
「はい、まぁ…」
アズは白々しく返事をすると、ローストチキンに手を伸ばした。
その後の会話は何事もなく弾み、食も進む。
カオスの泉での話、隣国の王の話…、至って普通の親子の会話だった。
気の回しすぎだったかな、と思いながら食後のフルーツに差し掛かる頃、
「ところで…」
父上が話を切り出した。