記憶 ―砂漠の花―
『…私そこまで辛口言ってない…』
「…あ、今のは俺ですから。」
はははっ…、とアランは笑った。
無理に笑わなくてもいいのに、彼にはそういう生き方が染み付いてしまっているようだった。
暗い表情のアズの横で固唾を飲んでいた母上が、父上の手を取り寄り添った。
「…聞いたよ。『嘘のない国』…。私たちの犯してしまった罪に、何も言い訳は出来ん。」
母上も隣で静かに頷いた。
「私は、カルラと二人…、静かに暮らそう。マルクの事が一段落したら、アズや君たちに全てを任せる…。すまない…!」
父上はこの場で、
深く、頭を下げた。
偉大であるべき父上の姿が、
小さく小さく見えた。
明けていく空に、
微かな、暖かな光。
静かな朝。
でも、それは…
――ドーンッ…!!
城壁の石が、悲鳴をあげる声で一変した。
「何だっ!?」
「何が起きてる!?」
先生とキースが声をあげる。
地響き…
部屋の床が揺れる。
「リ…リオン様っ!!城が…城が攻撃を受けています!!」
息を切らせたリザさんが、部屋の入り口から叫んでいた。
まだ…
平穏には程遠い……