記憶 ―砂漠の花―


『大丈夫、うまくいく。ただ、いつ魔術を使うかが大事ね。アランを信じてる…!』

『……分かった。』

アランは渋々納得した。

回線を繋いでいた事が、こんなにも幸いするなんて思いもよらなかった。



「……では、心臓を抜かせて貰いますよ…?」

…やっぱり。


マルクが私に一歩一歩近付く。


後ろからは、アズの、皆の悲鳴にも似た叫び声。

きっと駆け出そうとする皆を、アランが必死に止めている。


マルクの手の先が、私の胸に向く。
白い魔力が音もなく大きくなった瞬間、それは起こった。


「……!!」


――紫の力…!


『駄目よ、まだ早い!』


ピタっと、マルクの魔力が落ち着く。
アランの方へ向いた。


「…何ですか…!?」

アランからマルクに返った言葉は、普段のふざけた口調だった。


「いや、違う、違う。こいつ等が暴れるからさ、邪魔になるだろ?『動き』を止めただけ。さー、やっちゃって?」

私も振り向く。
そこには、動きを止められた皆が、苦痛の表情を浮かべて私の名前を叫ぶ姿。


「アラン!!お前、何のつもりだ!!ふざけるなぁー!約束しただろう!」

アズがアランに罵声をあげる。


< 255 / 283 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop