記憶 ―砂漠の花―
俺は、キースと二人でこの城の裏庭に来ていた。
先程の「例の場所」とは、
この裏庭の事だ…。
少し寂しげな…、
戦争で破壊され、崩れかけた城壁。
そこからは、向こうに果てしなく続く砂漠の大地が覗いている。
城壁の手前では、
色とりどりの花たちが、夜風に揺られて月に照らされていた。
勿論、この乾いた砂漠で花が早々咲くはずがない。
アイリが、育てた花壇だ。
ラルファを旅立つまで、アイリが毎日愛情を注いで育んできたこの花壇。
マギーに託した後も尚、花壇の多年草たちは元気に咲き誇っている。
きっと…
アイリの想いが残ってる…。
誰もが、そう感じている。
ヒヒィン…
『…墓参りか…?』
花壇の横の馬小屋から、白い馬がそう鳴いた。
茶色の馬とともに、ぱかぱかと足音を発て、俺たちに柵一杯まで近づいた。
「…ラオウ、レン…」
彼らは、哀しげな瞳で花壇を見て、その片隅にある石に瞳を落とした。
―――墓石。
きっと…、
墓石は、一つで良い。
俺たちは、誰が提案するわけでもなく、自然とそうしていた。
二人で、一つの墓石。