記憶 ―砂漠の花―
「あたし…!?そんな事言ってたぁ?」
身に覚えのない行動に、さらに奈央がそれを目撃し、私の心の内を知っている事に焦りを感じる。
普段、ふいにそんな事を思ってはいたとしても、口には出さないよう気を付けていた。
そんな感情を抱くなんて、私は変なのだから…。
「言ってた、言ってた!」
「まぁ…愛里といえば不思議っ子だからね~?」
絵美が子供をあやす様に、私の頭を撫でた。
「………。」
私は肩をすくめた。
「で…どうする?この後…」
腕時計を確認する奈央の問い掛けに、絵美が私を撫でていた手を止め、しかめ面をする。
「さっき、電話で母ちゃんに帰って来いって怒られてさぁ…。梓を迎えにこさすって言うんだよね…」
「アズ様、来るの!?」
そう高い声をあげる奈央の表情は、絵美の表情とは相反して輝いていた。
「だ~か~ら~…『梓』だってば…。あんなんのどこがいいの…?」
絵美がしかめ面を続ける横で、
ざわざわと…、
私の心が何かに反応を示し始めていた。