記憶 ―砂漠の花―


「……アズ…?アズ…って?」

私は、そう絵美の腕に片手を掛けた。


どこかで聞き覚えのある名前…


アズ…
…アズ……?



「うちのボンクラ兄だよ。あんな真面目だけの男のどこがいいんだかね…」

「かっこいいじゃん!しかも超優しいんだよ!愛里、会ったことないの?」

奈央が意気揚々に私に聞いた。

「……うん。」


梓…?

ううん、
心に引っ掛かるのは、

アズ…
アズ…



「そういや…梓も砂漠とか好きだよ。この間のテレビ『世界の美しい景色』で『夕日で紅く染まる砂漠』とか…?食い入るように見てた。」

「…砂漠…を?」



――コンコン…

ドアの硝子部分を叩かれた高い音が、部屋に響く。

奈央がいち早く駆け寄り、中から外を覗き確認すると、嬉しそうにドアを開けた。


そこには、優しそうな長身の男性の姿。


「アズ様~!迎えに来てくれたの~?」

「あぁ、奈央ちゃん…こんばんわ。いい加減その『様』ってやめてくんない?」

奈央が本人にも同じ事を言われ、唇を尖らす。


優しい、
ちょっと低めの甘い声…

私は、
この声を、きっと知ってる――


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