記憶 ―砂漠の花―


「はい、皆さん…お家に帰りますよ?」

優しい梓さんの視線が、
私に向いた。


「はぁ――い…」

2人がふて腐れつつ準備を始める横で、

私と梓さんは見つめ合う。


なぜか…、
お互い、
目が離せない…


私の鼓動が早まる。


――ドクン…ドクン…


胸が苦しい…
苦しいの…

どうして?



「…あず…さ、さん…?」

私は、やっとの思いでその名前を呼んだ。


きっと貴方も、
…同じ気持ち。



「…君の…名前は…?」

「…愛里…。」


「…アイリ…ちゃん?」


私の心が悲鳴をあげた。

きっと、
貴方も同じ――


なぜか…

涙が溢れる―――



『…ねぇ、アズ?
…やっと、逢えたね…』



私の心が、

そう呟いた…。



きっと…


きっと、

この想いは…

「彼方」から―――


遥かなる、
幾つもの時空を越えて…



私たちの元で、

誇らしく、
凛と…


「花開く」――――




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