記憶 ―砂漠の花―
父上の考えはこうだ。
アズが国王に即位する前に、身軽な身分の内に一度外の世界に出したかった。
噂が噂で終わるにしても、この機会を利用して世を見て回り、その身で、肌で学習してこい、と。
「…アズと離れた事って一度もないや…。寂しいなぁ~…」
一人蚊帳の外で、ボソッと呟いた言葉が二人に聞こえてしまい、一瞬気まずい空気が流れる。
「あっ…」
「アイリ…。俺も寂しいけど…お前もそろそろ兄離れをね…?」
そうアズが私に向き直り、優しくなだめている矢先だった。
「アイリ、お前も行くのだよ?アズを助けてやってくれ?」
父上の言葉に、私もアズも目を見開き一拍止まる。
「わっ…、私も行くのぉー!?」
「アイリも連れて行くの!?…本気ですか…!?」
「あぁ。サザエルにはまだ多くのウィッチが存在するという。お前も勉強になるだろう。それに、可愛い子程旅をさせろ、と昔から言うだろう?」
はははっと、父上は笑った。
「…まいったなぁ…」
額に手を当てて苦笑いをするアズが、ボソッと呟いたのを、私は聞き逃さなかった。
「私、そんなにお荷物にならないもん!!」
「…え?…あぁ。本当?それ。」
「た、多分?」