記憶 ―砂漠の花―
旅立ちの日が、翌日に迫った。
私とアズは、しばらく行けないであろうカオスの泉に向かう途中である。
「アイリ様、旅に出るってー!?」
街の市場の大通りを歩いていると、果物屋のおばさんに声を掛けられる。
「いつ旅立つの?」
買い物客の親子もそう聞いた。
「明日の朝だよ。」
そう答えると、私の視界に美味しそうな果物たちが飛び込んできた。
「おばちゃん、これ五個ちょうだい!いくら?」
よく熟れたマンゴーの実を手に取った。
おばちゃんは私の手にあるマンゴーを自分の手に渡されると、
「何だよ、水くさい!餞別にあげるよぉ!」
と、袋にマンゴーやらパパイヤやら数種類を放り込み、大きくなった袋を私に渡した。
「いいの~!?わぁーい、ありがとう!」
素直に喜ぶ私の元に、アズが駆け寄る。
「アイリ!またお前はっ!」
「いいんだよ、アズ様。二人とも初めて外に出るんだろ?頑張るんだよ!」
「はい。」
「本当ありがとね、おばちゃん!」
手を振って市場を歩き出す。
黄色の砂利道。
賑やかなに立ち並ぶ店に、行き交う人々。
母と子供の親子連れは、買い物籠を手に掛けて。