記憶 ―砂漠の花―

「あぁ、大丈夫だよ。アイリもいるし…」

「でも、アイリ様は女性ですしっ。聞いたお話によると二人きりの旅とか…。なぜ一人も兵士をお付けにならないんですの!?」


アズが答える時間も与えず、一方的に話すエミリ。

その瞳はアズの顔を見つめ、若干潤んで見える。
まるで私は目に入っていない様子。


アズの傍にいたラオウが、珍しく私の方に寄って来る。


『俺、あの女苦手だ。いつもあの調子だぜ!?うるせっての!』

「でも、アズもまんざらでもないんじゃない!?ヘラヘラしてるしっ?…本当に人気者ね~…!」


エミリには聞こえない様に、ラオウの陰に隠れてボソボソと話す。

別に、アズがエミリにその気がない事は知っている。

だけど、優しいアズは笑顔を浮かべたまま、いつも、どっちとも取れない態度で濁すのだ。

なんだか、あの笑顔に腹が立ってきた。


「…何なの、あの笑顔は…」

私は眉をしかめてアズを見た。


『いや絶対、あの超音波にやられてんだって!』

「そう?」

『麻痺効果じゃねーの?こぇ~っ…』

ブルルッとラオウが鳴く。

< 34 / 283 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop