記憶 ―砂漠の花―
「あぁ、大丈夫だよ。アイリもいるし…」
「でも、アイリ様は女性ですしっ。聞いたお話によると二人きりの旅とか…。なぜ一人も兵士をお付けにならないんですの!?」
アズが答える時間も与えず、一方的に話すエミリ。
その瞳はアズの顔を見つめ、若干潤んで見える。
まるで私は目に入っていない様子。
アズの傍にいたラオウが、珍しく私の方に寄って来る。
『俺、あの女苦手だ。いつもあの調子だぜ!?うるせっての!』
「でも、アズもまんざらでもないんじゃない!?ヘラヘラしてるしっ?…本当に人気者ね~…!」
エミリには聞こえない様に、ラオウの陰に隠れてボソボソと話す。
別に、アズがエミリにその気がない事は知っている。
だけど、優しいアズは笑顔を浮かべたまま、いつも、どっちとも取れない態度で濁すのだ。
なんだか、あの笑顔に腹が立ってきた。
「…何なの、あの笑顔は…」
私は眉をしかめてアズを見た。
『いや絶対、あの超音波にやられてんだって!』
「そう?」
『麻痺効果じゃねーの?こぇ~っ…』
ブルルッとラオウが鳴く。