記憶 ―砂漠の花―
ラオウを恐がらせるなんて、あの女ただ者じゃないわ…。
「いつお戻りになりますの?!」
再び、その甲高い声が響いて、私の目はエミリに向いた。
「さぁ…。いつとは決まってないし。」
「そんな何日も何ヵ月もアズ様にお会い出来ないなんて…」
押され気味の、引きつる笑顔のアズに嫌気がさす。
私は、足を進めた。
「アズ!先に行ってるよ!!」
すれ違い様にそう言うとエミリと目が合った。
「あら、アイリ様。ごきげんよう…。」
不敵な笑顔で軽くおじぎした。
「…ごゆっくり。」
「あ、アイリ…!」
アズが私を呼び止めるが、後ろ向きのまま手を振った。
今、エミリの顔は見たくない。
ずんずんと唇を尖らせて砂利道を進んだ。
ヒヒィン!
『あ、俺も連れてけよ!あそこに置いてくなよ~!』
エミリから超音波が出ていると信じているラオウも、そう鳴いて私の後に続いた。
『あの女、アズがアイリにベッタリなのが気にくわねーんだぜ?』
「…知ってる。ねぇ、ラオウ、乗っけて?先に泉に行っちゃおう?」
『…しょうがねぇな…』
その後、アズを待つ間に、おばちゃんからの果物は全部ラオウと二人で食べ切ってやった。