記憶 ―砂漠の花―
情報も嘘かもしれない。
ただの噂かもしれない。
危険な目に合うかもしれない。
「アイリ、頑張ろうな!」
そう差し出された手を、しっかりと握った。
「うんっ!」
「お前の事は…、命に変えても俺が守るから…」
「え…?」
勢い良くグイッと体は引っ張られ、私はほとりのアズの横へと導かれる。
そして、
急に背中に力を感じて、
「えぇっ!?」
―――バシャァ…ン!!
私は、泉の中へと突き落とされたのだ。
両手を懸命に動かし、あわてて水面から顔を外に出すと、ほとりで笑いながら問うアズ。
「気持ちいいか?」
キースは水の音に驚いたのか半身を起こしていたが、また何事もなかったかのように身を伏せて目を閉じた。
「何すんのー!?着替えっ、これしかないのに!」
ムキになる私を横目で笑いながら、自分はしっかりとローブを脱いでから泉の中へ飛び込んだ。
『次期国王もまだまだガキだな…。今年いくつになる?』
「23才っ」
私がキースに向かって叫ぶと、キースから溜め息が漏れた。
「ぷはぁ…。水!最高だね!ラオウも入口が通れればなぁ…」
そう言ってスイスイと泉を泳ぎ出した。