記憶 ―砂漠の花―
再び、
アズと目を合わせた瞬間、
「ごめんっ…!」
そう私を引き離した。
アズは大きな音をたてながら、泉から一人上がると、上半身裸のまま足早にこの場を去ろうとする。
一度も私を振り返らずに…。
「アズッ!」
私は無意識にアズの背中を呼び止めていた。
アズがピタリと止まった途端に、この後私は何を言うべきか、自分の口元に手を当てて目を泳がせるしかなかった。
…だって、何を言うの?
「お前、今の俺といると危ないから…。ラオウと先に帰るから。」
――嫌だ…、行かないで…
私の心の中に確かにそんな感情が存在した。
「アイリ、キースに送ってもらって?」
――私と、一緒にいて…
そんな私の心を否定するかの様に、唇はかたくなに言葉を発しない。
「…ローブ、乾いてる俺のを着ろよ?」
そう言った時に、やっと私を少しだけ振り返る。
しかし、優しくそう言い残すと、アズは本当に去っていってしまった。
アズが去った後の泉には、
いつも通り穏やかに時が流れ、風で砂ヤシが揺れる。
今の出来事は、何…――?
今のは誰…?
今の…感情は何…?
…え…?