記憶 ―砂漠の花―
ただただ…
泉の中に、立ち尽くす私。
今起こった事を、
頭で順に追っていく…。
それと同時に、今まで過ごしてきた兄妹での思い出が、頭の中を駆け巡る。
キースが去っていく前、私はアズに何を思っていた?
あの時…、
確かにアズに触れたいと、
そう思っていた。
―――ガサッ…
アズ?と、目をあげると、そこにはキースの姿があった。
『大丈夫か?』
「大丈夫…じゃ…ない。」
泉のほとりで白い頭を傾げたキースに、私は切れ切れになりながら言葉を返した。
『とにかく、ふやける前に水から上がりな。考えるのは、その後だ。』
キースに言われるまま土へと上がり、濡れた服を脱ぎ、アズの残したローブを着る。
そこまですると、ペタリとキースの背にもたれかかった。
ローブからは、アズの匂い。
胸が締め付けられる。
さっきと、同じ匂い…。
「…おかえり、キース。」
『あー、邪魔かと思ったから出ていったんだが、すぐアイツ俺に追いついて帰って行ったし。』
「…うん。」
『それにアイツ、俺の言葉も分からんくせに、アイリを頼むって命令していったしな…』
「うん…」
キースが、私の顔を覗き込む。