記憶 ―砂漠の花―
『ショック、なのか…?』
「…うん。ずっと兄妹だと思って過ごしてきたし、こんな事考えた事なかったもん。」
日が落ちて、暗くなっていく。
緑の茂る中で、姿の見えない虫たちが鳴き出した。
キースは私を見つめると、
『でも、血は繋がってない。』
そう言い放った。
『知らずとも分かる。お前はウィッチ。アイツは違う。』
そう、誰もが分かる事。
兄妹である事を、それが否定する。
『明日から二人で旅立つんだ。お前はどうしたいのか、今夜考えるんだな…。』
「でも…」
『旅の目的を忘れるな。アイツの母親が見つかったら?本当の妹が見つかったら…?お前の生活だって変わるかもしれないんだぞ?』
「なんで知ってるの?」
『…自然界の情報網をなめるな。』
そう、今の生活が当たり前過ぎて気が付かなかった。
本当の妹、アイリ。
その名をもらった私。
じゃあ…、
アイリが見つかったら?
私は、誰?
私はいらなくなってしまうの?
私はアズの、何…?
これだけは言える。
私はアズと離れたくない。
今の関係を、壊したくない。
だけど…、
兄妹愛なのか、恋愛感情なのか、考えても分からない。
本当のアイリなんて、見つからなくていい。