記憶 ―砂漠の花―

『ショック、なのか…?』

「…うん。ずっと兄妹だと思って過ごしてきたし、こんな事考えた事なかったもん。」


日が落ちて、暗くなっていく。
緑の茂る中で、姿の見えない虫たちが鳴き出した。


キースは私を見つめると、

『でも、血は繋がってない。』

そう言い放った。


『知らずとも分かる。お前はウィッチ。アイツは違う。』


そう、誰もが分かる事。
兄妹である事を、それが否定する。


『明日から二人で旅立つんだ。お前はどうしたいのか、今夜考えるんだな…。』

「でも…」


『旅の目的を忘れるな。アイツの母親が見つかったら?本当の妹が見つかったら…?お前の生活だって変わるかもしれないんだぞ?』

「なんで知ってるの?」

『…自然界の情報網をなめるな。』



そう、今の生活が当たり前過ぎて気が付かなかった。


本当の妹、アイリ。
その名をもらった私。

じゃあ…、
アイリが見つかったら?
私は、誰?

私はいらなくなってしまうの?

私はアズの、何…?


これだけは言える。
私はアズと離れたくない。
今の関係を、壊したくない。

だけど…、
兄妹愛なのか、恋愛感情なのか、考えても分からない。


本当のアイリなんて、見つからなくていい。

< 42 / 283 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop