記憶 ―砂漠の花―
「悪いっ!困らすつもりはなかったんだ!今のも忘れて!今まで通り、楽しく旅しよう。な?」
私の返事も待たずに、この場を逃げる様にしてラオウを走らせた。
「私…どうしたらいいの…?」
ぽそっと呟くと、泣きそうになって唇を噛んだ。
どうしたらいいんだろう…。
「ほらっ、お前も早く来いよ!」
少し先からアズが普段通りに笑っていた。
「…うんっ、待って。」
私は泣き出しそうな自分の鼻をすすり、普段通りの甘えた声を出してレンと走り出す。
今のアズの笑顔が「嘘」なのだと、私の血がいう。
だけど、
気が付かない振りをする。
今の私には上手く答えられないから。
このまま…、
アズの笑顔に甘えてしまう私を許して下さい。
『アイリー。アズの奴、アイリに何かしたの?』
レンが砂を蹴りながら鳴いた。
「何でもないよ…。ほらっ、早くラオウに追いつけ!」
私はレンに悟られない様に明るい表情で、ペシペシとその背を叩く。
『え~?ね、ねっ昨日?』
「カオスの泉でちょっとねっ。」
しつこく聞きたがるレンに、仕方なくそう答えた。