記憶 ―砂漠の花―


その人に手を振られた以上、近づいて行くしかない。
私たちは知らん振りも出来ず、そのまま馬を走らせた。


――ざわっ…

「……!?」

やっと顔がはっきりと見え始めた頃、私の血が何かを感じ取る。

ざわざわと、
血が騒ぎ出す。


「アズッ!!」

私より一足早く走っていたアズは、男のすぐ近くまで迫っていた。


「待って!アズ!その人、普通の人じゃないっ!!」

「…え?」

私はレンを急かせてアズの元へ走る。


「何者だ!?」

ラオウの背から下りたアズの問いに、男は声を殺して笑った。

ラオウとレンも何かを感じたのか、
『何だ、お前』
『変だぞ、コイツ』
と騒ぎ出す。


「おいっ!何を笑っている!」

アズが剣を向け、緊迫している空気にも関わらず、

「はははっ…」

その男は、さらに声をあげて笑い出した。

この雰囲気…、
この声、どこかで…。


『おいっ…』

とレンが何かに気付き、ラオウを見た。

『あぁ…』

とレンの呼び掛けにラオウも頷く。


『なんで、こんなところに…』

『あの白狼がいるんだよー!?』


「キース!?」

私の呼び掛けに、
剣士風のその男は、

「おぅ。」

と片手をあげた。

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